黒いもやが竜の形を造っていき,あっという間に黄金の巨大な竜が姿を現した.

'ガウルルル……人間……よくも我が領地を荒らしてくれおったな……'

意外……でもないか.

竜が言葉を話すなんてよくあることだ.

むしろ言葉を話せるなら好都合.

暴力でねじ伏せると言うのはあまり俺好みじゃないし,説得してみるとしよう.

'勝手に雨を降らせたことは悪かった. だが,こっちにも色々と事情がある. 黄眼の翼竜,お前は何を望んでいるんだ?'

'我が望むことなど人間如きに叶えられるか! 我の眠りを邪魔した罪,命をもって購え!'

あー,対話不可能なパターンかよ…….

しかしステータスを見た感じはスイより低い感じなので,戦っても負けるということはないだろう.

以前より魔法書のおかげでパワーは底上げされているし,レベルも上がっている.

地属性の相手に水属性は有利にならないから,スイの効果がアドバンテージにならないのはちょっと残念ではあるが.

ガウルルル!

竜から黄金のブレスが飛んできた.

かなり大きい. 正直避けてしまいたいが——

'な,何よアレ……! 竜っていうのはあそこまで規格外なの!?'

'ユーキ,逃げましょう! さすがに相手が悪いです!'

俺だけならなんとかなっても,二人はまだまだ竜を相手にするには力不足.

守りながら戦うしかあるまい.

となれば,ブレスを結界で防ぐか,それとも——

俺は聖剣エクスカリバーを一振り.

風属性を加えることで地属性に対して有利な条件で応えた.

ヒュー……ポッ!

'え……? 何が起こったの!?'

'ブレスが……消えました……'

'ガウルルル……?'

黄眼の翼竜を含め,俺以外の全員がクエスチョンマークを浮かべていた.

いや,ふと隣を見るともう一匹の翼竜だけは状況を把握していたみたいだが.

'まあ,タネも仕掛けもない簡単なトリックさ. ブレスを風属性が乗った斬撃で吹き飛ばした——ってことだな'

'ガウルルル……? そ,そんな馬鹿な……'

硬直する黄眼の翼竜.

俺はやれやれと肩を竦めた.

'ご主人様ー,あのバカと話してきていい?'

'あのバカってのは黄眼の翼竜のことか? 好きにするといいぞ'

'ありがとー'

スイはふわふわと上空を駆け上がっていき,黄眼の翼竜の目の前まで移動した.

そして,小型化を解除して本来の巨大な竜の姿になる.

何をするのかと思えば,スイが何かするということはなかった.

それなのに,黄眼の翼竜の様子が何かおかしい.

身体中から汗をかき,ぎこちなく右往左往するのだった.

'ガウルルル……先輩……勘弁してください……'