『お帰りなさいませ』
ベリウスの合図で再び五人の騎士団員が集まる。
ロバートとアイルがそれを迎え入れていた。
「お出迎え感謝いたします。最後の工房をお見せいただける、ということでしたが……」
「準備は整っております。こちらへ」
ベリウスの対応をアイルが引き継ぐ。
それに対するベリウスの回答はこうだった。
「一度情報をまとめさせていただいてもよろしいかな?」
アイルがどう答えたものかと思案する。
すかさずロバートがフォローに入った。
『もちろんでございます。我々は外したほうが……?』
「失礼ながら、機密情報も含まれるためそうしていただけるとありがたい」
『かしこまりました。では……』
ロバートが目配せするといつの間にかメイドたちが椅子や机を並べ始める。
あっという間に外に小さな会議室が出来上がった。
「素晴らしいですな。ここの使用人の方々は」
『ありがとうございます。では、我々はしばらく外させていただきましょう』
「しばらくしたらこちらからお声掛けいたします」
一旦アイルとロバートが騎士団のそばを離れる。
メイドたちはまたいつの間にか姿を消していた。
「ありがとう、ロバート」
以前までのアイルなら自分が判断しきれなかったことを気にかけただろう。
『いえいえ、差し出がましい真似を……』
だがアイルはすぐに切り替えて次を見据えていた。
「あちらの会話は……」
『もちろんすべて筒抜けでございます』
「さすが。ランド殿に手土産の一つはつくれると良いのですが……」
ロバートは感心する。
アイルの成長は喜ばしい。ランドたちに追いつけずとも、一つずつ確実にできることを増やしていっている。
あれだけ高い目標であるランドやミルムを見てもなお、必死に食らいつこうとする。
これならばいずれ……。
「始まったようですね」
『ええ』
ロバートはすぐ頭を切り替え、騎士団から一つでも多くの情報を取り出すことに集中し始めた。