プールの材料に拘りたくても私には鉄しか用意できない。
仕方ないから鉄で大きくプールを作り、磨きまくるしかない。
大変そうだがキアラを入れる時点で怪我をさせないようにわずかなササクレもなくなるよう磨きをかける。
角も全て丸く安全に仕上げておこう。
外形は簡単に作れたが、磨きが大変だ。サンドペーパーや砥石なんてないから、そこらの砂や岩や鉄で代用している、
鉄は金操で操ればよいが、砂や岩が大変だ。
ただでさえ魔力をバカ食いする金操なのに、砂や岩を操作するとさらに何倍もの魔力を消費してしまう。
修行にはもってこいだが、これはきつい。
しかも中々きれいにならない。
以前空を飛ぶ用の鉄板の底を鏡面仕上げにしたが、面積はあれの百倍以上だ。
形状もあれより複雑なので苦戦している。
ちなみにサイズは横十メイル、縦十五メイル、深さは三段階、半メイル、一メイル、一メイル半だ。
磨き続けること二週間、鏡面仕上げとはいかないが表面が滑らかに仕上がった。
これなら安心してキアラを入れてやることができる。
さあキアラを呼んでこよう。
「カーにい、何これ?」
「ふっふっふー、キアラのために作ったんだぞー。プールと言ってな、キアラのようなお姫様しか入れないんだぞ。」
「いつもカーにいが入ってるあれとはちがうの?」
「もちろん違うさ。あれよりだいぶ大きいだろ?」
「ほんとだー。大きいー。」
「さあキアラ、服を着たまま入るんだぞ。今日は泳がず水遊びをしよう。ここからあっち側には行くなよー。」
「みずあそびー? どうするのー?」
「簡単だよ。水をバシャバシャかけるだけ。こんなふうに。」
そう言って私はキアラに水をかける。
「あははーおもしろーい。私もやるー。」
キアラはそう言って手足をバタバタ動かし水をかけてくる。
短い手足を一生懸命動かして水を私にかけようとするが、水は上にしか弾けない。
なんてかわいいやつだ。
「いいぞいいぞー。さすがキアラ、もっと来い。」
「おもしろーい! カーにいもっともっと!」
よーし、それなら面白い物を見せてやろう。
『水球(みなたま)』
キアラの頭サイズの水球を何個も作り出し、お手玉のようにクルクルと回してみる。
「どうだーすごいだろー。」
「すごーい! どうなってるのー? お水が生きてるみたい!」
「ふふふーこれが魔法なんだぞー。キアラもやりたかったら母上にお願いするといいぞ。」
「やりたいやりたい! お願いするー!」
こうして日が暮れるまで私とキアラは水遊びに興じたのだった。
キアラももうすぐ三歳、魔法の稽古を始めたという話は聞いてないので、気になっていた。これで魔法にも興味を示したことだろう。後は母上がうまくやるに違いない。
私に魔法の指導なんかできないしな。