しばらく沈黙が続く。

アレックスちゃんは真剣な表情だ。

「カースは上級貴族が嫌いなの?」

「嫌いではないけど、できるなら関わりたくないね。」

「今のところ……私に縁談はないらしいわ。父上も母上も閨閥形成に興味はなさそうだし。」

「建国以来の名門らしいね。お父さんから聞いたよ。」

「でもそれは私の耳に入ってないだけで実際はかなりの縁談があるはずよ。もうすぐ卒業だし。」

「そうだろうね。」

「でもそんなのどうでもいい! 私、カースのためなら全て捨ててもいい! どうしたらカースと一緒にいられるの!? 教えて!!」

九歳の言うことじゃないだろう。

そして同じ九歳に答えられる問題でもない。

ならば……

「そんなに難しい話じゃないと思うよ。だって僕らは所詮ただの子供だよ。したいようにすればいいんじゃないかな?」

「じゃあ私はカースの側にいていいの!?」

「そりゃいいさ。そもそも身分差を考えてみなよ。下級貴族の三男と超名門貴族の長女だよ? どうにもならないから、やりたいようにやろうよ。」

「カース……そうね。難しいことを考えても仕方ないわね。したいようにするわ。」

アレックスちゃんはおもむろに私の頬に唇を寄せた。

今できる精一杯の行動なのだろう。

可愛いすぎる。

そっと頭を撫でてあげた。

「あー、私の存在を忘れないで欲しいんだが。」

もちろん忘れてない。

「戦利品はバッチリですか? このことは内緒にしなくてもいいですよ。お任せします。」

「言えるわけないだろう。まあ私が言わなくてもお嬢様が言いそうだが。」

アレックスちゃんは自分のしたことで放心状態に陥っている。

なんてかわいい生き物なんだ。

さて、騎士長は子供の恋愛ごっこなどに関わる暇はないと思うが、どうなるだろうか。

私達の明日はどっちだ?