夜、いよいよ私の枷が外れる。
苦難の一ヶ月だった。何度かヒヤッとする場面もあった。特にトイレで。勢いでやったとはいえ、このような無茶は二度とするまい。
時間だ。首輪が外れる……
素晴らしい。まさに重圧から解き放たれた気分だ。
まずは錬魔循環をしてみよう。
自分のことなのにどうなってるかよく分からない。流れているのか止まっているのか、私の魔力はどうなってしまったんだ?
魔力庫から出し入れしてみる。
スムーズだ。この一ヶ月、魔力を振り絞って出し入れしたのが嘘のようだ。
それでも銀湯船は収納できないか……
鉄キューブを飛ばしてみる。
今や二百キロムはありそうだが軽々と浮く。金操も使ってみるが余裕だ。
今度最高速トライアルもしてみよう。
そうして私は様々な魔法の感触を確かめた。
やはりこの首輪をつけて正解だったようだ。
これで明日からも頑張れる。
明日からは魔石集めだな。
もうすぐ暑くなるので、その前に温度調節機能を付けたいものだ。
母上に相談したところ、スパラッシュさんをガイドに雇うのが手っ取り早いらしい。
明日の放課後ギルドに行ってみよう。居ればいいのだが。
そして翌日。
「おはよう。カース君いい服着てるじゃない。」
「おはよ。分かる? さすがサンドラちゃん。一ヶ月前に注文したのが昨日出来たんだよ。着心地が良くて気に入ってるよ。」
「デザイン的にはいつもの服装なのに高級感が違うわね。洒落た貴族みたいよ。」
そもそも貴族なんだから当然だろう。
「いやー最近服装に拘りが出てしまってね。とりあえず魔石を集めようかと思ってるところなんだよね。」
「それって凝り始めたらキリがない趣味よね。お金がいくらあっても足りないらしいわ。ほどほどにね。」
それは怖いな。まあ私は自分で集めるつもりなので、そこまで浪費することもない、かな?
そして昼休み。いつものように昼寝をしようとしたら、アレクが魔力庫から真っ赤なコートを取り出して私のお腹にかけてくれた。
これはこれで贅沢な使い方だな。
「あれ、アレックスちゃんもいいコート持ってるのね。目が覚めるような真紅でアレックスちゃんによく似合いそう。」
「う、うん。カースが用意してくれたの。」
「カース君、その年でどんだけお金持ってるのよ。しかも女の子にコートってどこの大貴族のオッさんよ。」
「いやーたまたま素材が手に入ったものでね。それにアレクは特別だからね。」
「はいはい分かってるわよ。皆まで言わなくても。寝るわ、おやすみ。」
サンドラちゃんも可愛い所があるものだ。コートはあげないけど。
でも五人でお揃いの制服のような物を作ったら面白いかも知れないな。