カース達が特訓をしている頃、領都のとある貴族家では。
「くそが!」
「おおームカつくよなー!」
「何とか痛い目にあわしてやりてーよなー」
「どうだい? やってしまおうか?」
昨日、辺境伯邸のパーティーでカースに絡んだ四人組だった。
「ドニデニス様は何だって?」
「あのガキの服装を伝えたら『やめとけ』ってよ……」
「何だそりゃ? 日和ってんのか?」
「あの高慢女も関係してんのかもね」
「どーゆーことよ?」
「最近アレクサンドル家でもモメてんみてーじゃん? アナクレイルってボンボンが騎士団に取っ捕まったとかよー」
「あー、魔法学校の教官が治療院送りにされたってやつ? ありゃ一門同士の対決らしいな」
「あの高慢女が教官より強いというのかい?」
「まさかな……それともあのガキがやったのか……?」
「さすがに無理だろ? あんな弱そうな田舎者だぜ?」
「そんなことより高慢女だぜ! 今なら多少無茶してもアナクレイルのせいにできるんじゃねーか?」
「なるほど。それはいいね! あっ、魔法学校の女どもも奴にムカついてるみたいだよ?」
「絵が見えてきたんじゃねーのか?」
「おおー、女どもに情報を集めさせてよー、俺らは準備をするっと」
「誘き寄せるのもやらせりゃいいだろ。お茶会とかって言ってよぉ」
「確かに! 最近あの女ちょくちょくパーティーに出席してるもんね。男漁りかっての!」
「あのガキはどうする?」
「一緒にノコノコ付いて来るんじゃねーの?」
「まとめてやっちまうか。どうせドニデニス様にケツ持ってもらうんだしよ?」
「いい考えだね。じっくり楽しみたいね。一週間は情報集めと種まきかな。早くて来週末、遅くても再来週末には……」
「高慢女のくせに顔と体だきゃいいからな」
「おお、ボロボロに鳴かせてやんねーとな」
「一応用心に冒険者でも集めとくか? 家の護衛達を使うわけにゃーいかんだろ?」
「そうだね。念のため六等星ぐらいは欲しいよね。五等星が使えたら安心なんだけど」
一方また別の貴族家では。
「あの女さー! また目立ってたよね!」
「生意気よねー! ちょっと血筋が良くて美人だからってさ!」
「馬鹿三男なんかと仲良くしてさ! ほんっと男の趣味が悪いよねー!」
「私は美しい! なんて顔してポーズとってさ! ズベ公のくせに!」
「知ってる? あの女のミスリル像、金貨八千五百枚だって!」
「うっそ! そんなに上がったの? 結局誰が落札したの?」
「あいつよ、あの青髪変態貴族。あの女にはお似合いよね!」
「うっわサイッテー! 自分の像があんな変態に買われるなんて。これは天罰ね」
「あのアーパー女にはぴったりよね! そう言えばアナクレイル先輩とモメたらしいわね?」
「マジでー? あの女どこまで調子に乗ってんの? 分家のくせに!」
「教官も治療院送りになったじゃない? 誰がやったのかしら?」
「いくらあの女でもナユートフ教官には勝てないわよね?」
「まさかあの王都かぶれの下級貴族にそんなことできるわけないし」
「その子さー、昨日のパーティーで貴族学校の馬鹿どもに絡まれてたわね」
「どの馬鹿よ。馬鹿が多くて分かんないわよ」
「見た見た。精一杯虚勢張ってさ、冷静な振りしてんの。結局ダンスを終えたあの女が戻って来るまでビビりっぱなしだったみたいよ?」
「ますます分かんないわね。趣味が悪いにも程があるわ」
「礼服も買えないぐらい貧乏で、クタナツの田舎者で、顔も普通で、臆病者?」
「どこかに呼び出してさー、恥でもかかせてやりたいわね」
「どこどこ? 何かいいアイデアが浮かんだ?」
「それいいわ! 例えば来週末あたりにダンスパーティーを開くのよ。で、その前後に食事をするわけ。田舎者はマナーが分からなくて慌てるわよー?」
「なるほど! しかもダンスはワルツに限定したりして! 田舎者に踊れるはずがないわ!」
「それに余興とか言ってあの女を舞台に上げてさ、何か恥をかかせるの! ギャフンと言わせてやるのよ!」
「アリだわ! いっそアイリーンにも声かけてみる? あの女に首席を奪われてムカついてるんじゃないかしら?」
「アイリーンはだめよ。どうせパーティーに行く暇があるなら道場に行くとか言うのよ? それより後はスケープゴートが必要ね。私達の家を使うわけにはいかないわ」
「そうよね。泥を被る馬鹿が必要よね?」
「あっ! それなら貴族学校の馬鹿どもでいいんじゃない? あいつらもどうせあの女にムカついてるんじゃないかしら?」
「それってゴキゲンね! ホイホイ乗ってきそう!」
「面白くなってきたわね!」
名も無き魔法学校生、貴族学校生達の企みは果たして上手く行くのだろうか。