ふあぁーあ、よく寝た。昼過ぎかな?
「おはよう。目が覚めたらカースが隣に寝てて嬉しかったわ。」
「おはよ。僕も目が覚めて最初に見たのがアレクの顔で嬉しいよ。」
そしてアレクを抱き寄せる。柔らかな唇を味わう。今日はこのままアレクと寝室で過ごしたいところだが、そうもいかないよな、面倒だが外に出よう。
「え? もう起きるの?」
そんな悲しそうな顔で言われると決意が揺らぐではないか。もう一時間ぐらい寝室にいてもいいよね。そうしよう。
結局寝室から出たのは一時間半後だった。
寝室を出るとラグナとジャンヌがいた。正確にはラグナに殴り倒されたジャンヌか?
「おはよ。何事?」
「あぁボスぅ、こいつがボスに会わせろってしつこくってさぁ。起きるまで待てって言ってんのに聞かないから寝かせておいたのさぁ。」
「そうか。ありがとよ。」
ジャンヌが心配するだろうと思ったからリゼットは無傷だと伝言しておいたのに。どこまでもポンコツな護衛だよな。
「旦那様、昨夜は大変だったそうで。何か食べられますか?」
「マーリン、頼むよ。ペコペコなんだよね。」
「かしこまりました!」
この空きっ腹にマーリンの料理は嬉しいな。
「ガウガウ」
おおカムイ。お前もご苦労だったな。
「ガウガウ」
何? 色々と教えてやるから洗えって? しょうがないやつだなぁ。まあ昼風呂もいいか。昼食ができる前にサッと洗ってやろう。
そして風呂から出たら昼食、いいタイミングだ。
「犯人は騎士かも知れないんだって?」
「そうなの。カムイに案内されて行った先が騎士団詰所だったのよ。カムイから聞いたのね?」
「そうなんだよ。それも四人なんだって。
騎士が四人だとしたらどの道ラグナ一人じゃあキツかったかもな。
「四人だったのね。念の入ったことだわ。それからね……」
アレクも説明をしてくれる。ふーん、長男が怪しいのか。で、辺境伯は何を考えているのかいまいち分からないと。その辺はダミアンの判断次第かな。私がするべきことは……何だろう。特にないような……それよりむしろ父上だよ。なぜ父上があんな目にあってんだ? まあいい、夕方にはクタナツに戻ることだし、それから聞かせてもらおう。
「アレク、昨日はあれこれとありがとね。大変だったよね。」
「そんなことないわ。カムイと一緒だったし。」
「ガウガウ」
もっと褒めろって? どんどん贅沢になりやがる。あ、贅沢で思い出した。カムイのブラシを買いに行こう。どこに売ってんだ?
「ねえアレク。カムイが毛を梳かせってうるさいんだよね。どこかいいブラシを売ってるお店知らない?」
「うーん、ペット用のブラシになるわよね……アジャスト商会の『マーキーブランダ』かしら?」
「あー、いつか王都へ行く時にお土産を買ったお店だね。高級品が揃ってることだし、ありそうだね。」
ついでに騎士団詰所にも寄っておくか。アレクがプレッシャーをかけたらしいから、私からも念を押しておくかな。
「あれ? そういえばコーちゃんはどうしたの? ダミアン様達と一緒なのかしら?」
「そうそう。あいつらの居場所は内緒だけどコーちゃんが一緒だから安心だよ。」
アレクに内緒にする意味はないんだがね。もったいつけてるだけだったりする。
「カースのことだから想像はつくけど、それなら聞かないわ。さ、行きましょうか。」
ふふふ、やはりアレクに隠し事は不可能か。さあデートだデートだ。カムイも来るか?
「ガウガウ」
騎士団詰所だけ? そいつは助かる。ありがとな。
てくてく歩いて騎士団詰所に到着。道中には昨夜の血痕がべったり残っていた。ダミアンだけじゃなくてリゼットまで狙いやがって……
「邪魔するぜ。」
「騎士団に何かごっ……ご用ですか……?」
「うちのアレクサンドリーネから聞いてないか? 昨夜ダミアンとリゼットが襲われた現場にいた騎士。四人いるんだろ? そいつらを出してもらおうか?」
「……そやつらなら……閣下が直々に取り調べをされるそうで……ここにはおりません……」
「そうかい。なら辺境伯閣下に伝言を頼む。ダミアンとリゼットは無事だとな。」
「伝えておきましょう……」
「邪魔したな。」
さて、カムイ。その四人はここにはいないな?
「ガウガウ」
そうか。本当にいないのか。まんざら嘘でもないのかねぇ。辺境伯が直々に取り調べだと? 犯人を庇っているようにしか見えないが……まあいい。ダミアンが復活してからでいいだろう。今夜には目を覚ましているだろうし。
さて、買い物に行こう。
あ、アジャスト商会の店ってことは宰相から貰ったアレが使えるな。買い放題じゃないか。セルジュ君達も呼んであげればよかったな。