僕の家は二階建てだ。
広さはあるがかなり古い。そしてボロい。
母親とその両親と一緒に住んでいる。
つまり僕からしたら母親とおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住んでいるのだ。
廊下を歩けばギイギイと鳴り、扉をひらけばギギーと鳴る。
冬は寒くて夏は暑かった。
そんな家にあり、僕の部屋はまだ快適なほうだ。
二階の東南角部屋で日光もよく入る。
受験勉強をするにあたり二年前におじいちゃんが部屋を交換してくれたのだ。
と、いうよりもおじいちゃんは二階との上り下りが年齢的にきつくなっていた。
そのため一階の部屋へと移ったのだった。
「で……どっちから見せる?」
興奮がまだ収まりきっていない様子の美琴が尋ねてきた。
現在、僕の部屋で美琴と僕は対峙していた。
肩で息をしながら美琴が血走った目をむけてくる。
短い黒髪がすこし乱れている。
「そ、そりゃ……おまえからだろ」
「なんでよ?」
「おまえが見たがってるんだ……別に僕は見せたいわけじゃないから」
正論に美琴が口を閉じた。
しばらく考えた末にやっと言葉を発する。
「幸明は、わたしのおっぱい見たくないの……?」
「はい?」
論点がズレた。
僕のチンコを美琴が見たいと言い出した。
それならば美琴の胸を見せろと僕は言った。
等価交換だ。いちおう。
それが急に美琴の胸を俺が見たいかどうかというはなしになってしまった。
そりゃ見られるものなら見たい。
だがここで見たいと言えば、立場が対等になってしまう。
対等になれば当然に僕が先にチンコを見せなくてはいけない状況も生まれる。
つまり見せるだけ見せて美琴に逃げられる可能性があった。
「べ、別に……見たくねぇよ、そんなペチャパイ」
「だからペチャパイって言うな!」
そう叫ぶが美琴から先ほどまでの覇気はなかった。
「……やっぱり気にしてんだろ?」
「まったくではないわよ……」
照れたように顔を背け、美琴が唇を尖らせる。
「大きければいいなとは思うよ……」
「気にする必要ないだろう」
「え?」
正直な気持ちだった。
「女の価値は胸の大きさで決まるわけじゃないからな」
「ねえ、それってあんたにも言えることでしょ?」
「まあ……チンコのデカさで男の価値は決まらないよな」
「そうよ。それにあんたの場合は大きいんだから」
わかってはいるのだ。
しかし簡単に割り切れるものでもない。
胸の場合は小さくても「かわいい」で済む。
だがチンコの場合、しかもデカすぎる場合は「気持ち悪い」になってしまうのだ。
チンコの大きさで男の価値は決まらないかもしれないが、その男への心象はかわってしまう。
「それに僕は、胸はデカければいいとは思ってない」
「どういうこと?」
「その人に合っているかどうかが問題だな」
美琴がうるんだ目で僕を見ていた。
なんだよ。急にしおらしくなりやがって。
妙にドキドキしてしまうじゃないか。
「な、なら……わたしの場合は……ちいさくても、いい?」
「いいと思うぞ」
美琴の胸はちいさい。
だが美琴の少年らしい雰囲気と合っているとは思う。
「なら……見たい?」
もう一度、尋ねてきた。
論点はズレたままだ。
だがここまできたらしかたない。
正直に言うしかないだろう。
「見たいよ、当たり前だ」
「なら……見て」
つぶやくと美琴がゆっくりとジャージのチャックをあけた。
中には白いTシャツを着ていた。
うっすらと下着が透けている。
まだ夏へは遠い。
だが、湿った二人の呼吸が部屋を暑くしていく。
艶めかしいドロドロとした液体のようなものが、首元を這っているような感覚に陥る。
オナニーをするときには下腹部の血液が増量するだけだ。
しかしいまは全身の血液が増えているようだった。
「ねえ……そんなに見ないで……」
「どっちなんだよ?」
僕は目線を横へとずらした。
前チャックを完全にあけ終えた美琴が息の塊を吐き出す。
「わかんないよ、そんなの」
「男の一人や二人は知ってるんだろ?」
「そ、そうだけど……」
自分でついた嘘が自分の首を絞める。
そのことに美琴はいまになって気付いたようだった。
悔しそうに下唇を噛んだ。
僕は目線を美琴にもどしていた。
「ねえ……やっぱり見る?」
「やめてもいいぞ? そのときは、おまえの負けだ」
どんな勝負だよ。
と、つっこまれればおしまいだ。
だが負けず嫌いの美琴には効果覿面だった。
「み、見せるわよ!」
意を決したのか、Tシャツの裾を両手で握る美琴。
そしてゆっくりとそれをめくりあげていった。
まず見えたのは、美琴のパンティーだ。
ジャージからはみ出たウエスト部分がわずかに見える。
グレーのスポーツ系のパンティーのようだ。
それだけで僕の興奮は異様なものだった。
必死で肉棒が勃起するのをおさえる必要があった。
次に見えてきたのはひきしまった美琴の腰。
見事なくびれ。そしてかわいらしいヘソ。
白い滑らかな肌が、窓から入る陽光に反射している。
染みひとつない完璧なまでの腰だ。
女の子なんだな。
いまさらながら思った。
そしてとうとう美琴の胸部があらわになった。
白いブラジャーに覆われてはいたが、それはあまりにも淫靡な光景であった。
「どう?」
「どうって……ブラジャーもはずさないと」
「変態……」
自分で言い出したことのくせに美琴は唇を尖らせた。
ジャージの前チャックをあけ、Tシャツをめくりあげた美琴。
その姿はエロい。ただその一言に尽きた。
ありがとう神様。
手をうしろにまわし、美琴がブラジャーのホックをはずした。
どこか憂いすら帯びた女の目を美琴はしていた。
背徳的なうしろめたい気持ちにさせられる。
だって目の前でブラジャーをはずしたのは小学校のときから知っている幼馴染だ。
同性同士のように遊び、そして育った。
お互いの性を意識するような年齢になっても僕たちの関係が疎遠になることはなかった。
それはひとつに美琴が女らしくないという理由がある。
だが、それも今日で改めなくてはいけなかった。
美琴の真っ赤な頬からは湯気がでるのではないか。
そう思えるほどに火照りが伝わってきた。
「じゃあ……めくるよ?」
美琴が上目遣いでこちらを見る。
ホックをはずしたブラジャーをTシャツと一緒に美琴がめくりあげた。