1483 Episode One Thousand Four Hundred Eighty-one Glowing Palms

「……ユリア?……それともイリスなのか?……」

ガイウスは戸惑い混じりに静かに問いかけた。

だが棺の中の女性は、ガイウスをただじっと見続けるだけだった。

そのためガイウスは、さらに困惑の表情を見せた。

「……ユリア……じゃないのか?……だけど、どう見ても……」

ガイウスはそこで言葉が詰まった。

するとそこまで後ろに控えていたカルラが静かに問いかけた。

「ガイウスよ、そんなにそのユリアという幼馴染に似ているのか?」

ガイウスは棺の中の女性を凝視しながら答えた。

「似ている……俺が知っているのはユリアが十三歳の頃までだけど、どう見たってこの女性はユリアだよ……」

「ふむ、十三歳の頃か……しかし、ならば見間違えることだってあろう?」

カルラの当然の問いに、ガイウスがすかさず反論した。

「いや!見間違えるはずがないよ。この目、この鼻、この耳……どうみたってこの女性は大人になったユリアそのものだよ」

ガイウスは先程までの戸惑いを捨て、はっきりと確信的に告げた。

「そうか。では何故そのユリアがここに寝ている?」

「だからそれがわからないんだ。何故イリスの棺の中にユリアが寝ているのか……わからない、本当に……」

ガイウスは再び困惑の表情を浮かべた。

すると、突然女性の右腕がピクリと動いた。

ガイウスはビクリと大きく反応した。

「……ユリア……」

ガイウスの呟きに反応したのか、女性の右腕がまたも動いた。

右腕は肘を支点にしてゆっくりと静かに動き、上がりきったところで方向を変えた。

そして右手を開いて、掌をゆっくりとガイウスの顔へと差し向けたのだった。

ガイウスは戸惑いながらも顔を近づけて女性の掌を見た。

その瞬間、掌の中心が光り輝いた。

「逃げろ!ガイウス!」

カルラの鋭い叫び声が上がった。

ガイウスはそれに脊髄反射的に反応し、身体をひねって横に倒れた。

そして、それまでガイウスの顔があったところを、一筋の光の束が通過したのだった。

光の束はいとも容易く進路の先にある壁を溶かし、何処までも長く伸びていった。

尻餅をついた格好のガイウスはそれを見て、恐れおののいたのだった。

するとそこでようやく光の束が収束しはじめ、やがて女性の掌の中に戻った。

そして光が消え失せると同時に、女性がついに口を開いたのであった。

「……お前は一体何者なの?……何故このわたくしをユリアと呼ぶのかしら?……」