「続きまして魔法部門を行います。代表者は前に出てください。」

魔法部門は総当たり戦ではない。

速さ、正確さを競う標的射撃。

威力を競う標的破壊。

防御力を競う魔法受撃。

これら三競技の総合点で勝者が決まる。

やはり子供同士だから対戦はしないのだろう。

「標的射撃を行います。位置についてください。」

様々な距離、方向に二十ほど直径一メイルの標的が並んでいる。結構大きいな。

近くて五メイル、遠くて三十メイルほど離れている。

的の中心に近いほど高得点だし、丸ごと破壊できるのならそれでもよい。後の競技に使う魔力を計算するのも実力のうちだ。

まずは一人目、本校代表のソルダーヌちゃんだ。

「始め!」

彼女は呪文の詠唱を始めた。そうか詠唱する派なのか。あの呪文は……

『火矢』

一度に三発の矢が発射される。中々のスピードだ。本物の矢よりすこし遅い程度だろう。

正確さも中々。三発中一発はど真ん中、もう二発も中心から二十センチと離れていない。

それを繰り返すこと数回。二十個の的全てに命中していた。威力はともかくまさしく代表に選ばれる速さと正確さなのだろう。

ホユミチカ校とサヌミチアニ校は大したレベルではなかった。

最後はいよいよアレクの出番だ。どんな魔法を見せてくれるのだろうか。

「始め!」

『氷弾(ひだん)』

おっ、氷の弾丸か。円柱に円錐をくっつけたような形で銃弾より鋭い。

アレクはもちろん詠唱なし、一度に五発。それを四回であっさり終了。速さはぶっちぎりだ。さて、正確さは……ど真ん中が十四発、残り六発も中心から三十センチと離れていない。そして威力たるや圧倒的だ。ソルダーヌちゃんの火矢は的に刺さる程度だったが、アレクの氷弾は的を貫通していた。さすがアレク。

「くっ、さすがねアレックス。でもいいのかしら? そんなに魔力を使ってしまって?」

「何言ってるのよソル。あんなの魔力を使ったうちに入らないわ。」

「それが本当かどうかは残りの競技で見せてもらうわ。楽しみね。」

さすがに最上級貴族同士、知り合いなんだろうな。久々の再会っぽい雰囲気ではないか。

「標的破壊を行います。順番は先程の成績に則ります。」

これは三つの標的を破壊する競技だ。文字通り壊してもいいし、穴を開けてもいい、切断でも焼失でもよい。

標的は、木、岩、金属。一辺が五十センチほどの立方体が無造作に置かれている。硬そうだ……

一番目はホユミチカ校。時間制限は十五分。破壊できたのなら早さも得点になる。彼は時間いっぱい使って木の標的の角を三ヶ所削ることに成功した。

二番目はサヌミチアニ校。彼も時間いっぱい使って木の標的の右上の角を大きく削り取ることに成功した。

三番目はフランティア本校のソルダーヌちゃん。ゆっくりと詠唱を始めた。おや? この呪文は……

『氷弾』

やはり固い物を割るには固い物だよな。

貫通はしてないが穴は開いたようだ。彼女はその穴周辺目掛けて氷弾を撃つ。三発目で木の標的が二つに割れた。

さらに続けて氷弾を岩の標的に撃ち込む。やはり岩は固いようで穴すら開かない。そして時間切れ。あの硬そうな木だけでも、よく割ったものだ。

そして最後はアレク。次はどんな魔法を見せてくれるのか楽しみだ。

「始め!」

アレクは珍しくゆっくりと詠唱をしている。あれは氷弾だな。

『氷弾』

五発の弾丸が縦一列に発射され、木の標的に突き刺さる。あら、貫通してないし割れてもない、少しヒビは入ったようだ。

『浮身』『風操』

木と金属の標的を上空に浮かび上がらせた。なるほど、さすがアレク。頭を使っているな。

最初に落ちてきたのは木の標的。岩の標的に当たり先ほどのヒビから二つに割れた。次に落ちてきたのは金属の標的。岩の標的上部の中心にぶち当たり岩の標的は砕けた。

残り時間はまだある。金属の標的はどうやるんだ?

アレクは金属の標的に近寄りしげしげと眺めたりコンコンと叩いている。その上で……

「私はここまでにします。」

なるほど、金属は手こずりそうだから次に備えて魔力を温存するのか。色んな考えがあるものだ。

いよいよ最終競技だ。